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15分程で救急車はやって来た。
待ってる間、もうあまり話せなくなっていた崇さんが、耳元で囁く愛が耳に残って離れなかった。
「救急隊員の者です。負傷された方どちらですか?」
「彼です」
私は手を挙げ、救急隊員を誘導した。
「意識はあるみたいですね、すみません止血はどなたがなさいましたか?血圧と心拍測るので、左腕失礼します」
「止血はあのスタッフと私で」
「分かりました」
私がすっと退くと、隊員は彼のケガの具合確認しながら会話を続けた。
どうやら右腕は顔を狙われてとっさに出してしまったらしかった。
結果相手は怯んでナイフを離したが、傷は縫合が必要なレベルのようだった。
私のせいかも知れない。
あの時、私がもし逃げてたら崇さん怪我しなかったのかな?
結局、不安が消えぬまま、救急隊員に支えられながら部屋を出ていく間際、崇さんは私にこう励ましをくれた。
「俺居なくても、お前なら出来るよ。成功祈ってるね」と。
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