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食事は、上階にある夜景の綺麗なレストランだった。
崇さんとのデートは大体、街中デートが多かった。互いに忙しく自宅で会う回数が増え、最後はマンネリもあってか、想いも消滅していった。
結婚とか将来とか、あの時は考える余裕がなかったのは、崇さんの方だったように思う。
私は、本当は結婚したかったから。
シャンパンで乾杯から始まり、会話の大半は、フェスタの話と最近の仕事の状況や、顧客のニーズ傾向などだった。
料理は和製フレンチのフルコースで味は申し分なかった。
でも、メイン料理にさしかかった頃には、私は食事に集中出来ないようになっていた。
ぼんやり外を眺める。夜空の中でネオンの煌めきが無数に眩しかった。
すると、崇さんは何か勘付いた様子で、いきなり尋ねてきた。
「もしかして、好きな人でも出来た?」
「えっ?」
「いや、なんとなく」
そう言って崇さんは、ワイングラスを右手に取ると、少しぎこちなさそうに口元へと運んだ。
「まさか…ないわ」
上手く誤魔化せないかなと必死に笑顔を作ってみせた。
彼はそっかと頷いたけれど、まだ疑っているのは明白だった。
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