White snow

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「ミツバチを待つ花より、蜜を吸いに来る蝶の方が俺は好きだけどね」 困った様子で切なげにそう告げた彼はベッドから降りると、シャワールームの方へ消えた。 焦れたっさと、気だるさで何も言えずにいた。 急に解放されたために、身体に籠った熱と共に火照りが一気に冷めていく。 そうして冷えてく身体とは対照的に一筋の涙が頬を伝った。 呆れたんだろうな、崇さん。 でも、もう情熱が何か分からないの。貴方が嫌いなわけでも、悠哉さんを略奪する程にも燃え上がらない。 恋愛って美味しいところだけ、互いに吸いあえたらそれが一番じゃない? 蝶ってヒラヒラ舞うから綺麗なのよ。 花を選んでるわけじゃなくてただ舞うのが好きなの。 15分後。 崇さんが濡れた髪をバスタオルで拭きながら、バスローブを引っ掛けてシャワールームから出て来た。 「あら、まだ居たの?」 「逃げたいわけじゃないわ」 「ははっ、都合良いな。じゃあ今からやる?」 そう言って来たものの、彼は興味無さそうだった。 冷蔵庫から缶ビールを出すと、窓側の椅子に腰掛けてそれを飲み始めた。 「ごめんなさい」 「謝られるほど惨めなことないよ」 笑顔でそう言った彼の目元はちっとも笑ってなかった。 「嫌いになれないの」 「はいはい」 崇さんはちっとも目線を合わせようとはしなかった。 澄み切った夜空から降り始めた雪が、横浜の夜景に溶けるのをただ眺めていた。
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