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私はベッドから降りると裸足のまま、崇さんの元に駆け寄った。
「怖いのよ。誰かに愛される自信がないの」
幾度か重ねた失恋。崇さんと付き合う中で、少しは傷は癒えたはずだった。
でも、彼はどこか冷静で私に懐疑的だった。抱かれてる時も。ううん、雰囲気に流されて抱いてくれてたんだろう。
お互い付き合う上での義務的な行為でしかなかった。
デートも会話も、まるで色のない
ある意味大人の関係で、中身なんて考えもしなかった。
私があんなに必死で愛そうと思った時期、あなたは恋人として扱ってはくれなかったのよ。
私の胸の奥には、当時のわだかまりがなごり雪のように溶けずに今も残っていた。
「舞はきっとまともに誰かを愛したいと思ったことないんだよね、まだ」
いいえ、違うわ。
愛してくれなかったのはあなたの方
崇さんは立ち尽くした私の右手を引っ張ると抱き寄せた。
「期待裏切るようなマネばかりでごめんなさい」
「ううん、謝ることないよ。お前のことは仕事じゃ評価してる。企画だってあんなに頑張ってたの知ってたし、うちで特集組めたらなと思って色々根回しもした。
出会った時から、仕事に向き合ってる姿の方が素敵だと思ってたし、昇進試験受けて正社員になったのは本当心から喜んでるよ」
私は頷くしかなかった。
「でもね、女としては評価出来なかった。だって、他にいくらでも尽くす女はいたからね」
「そうね…あなたなら私以上に、いい人いくらでもいるわ」
「それでいいの?」
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