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パーティーも終盤。
私は作ってもらったミントフレーバーのカクテルを片手にテラスに出た。
すると、視線の先にスマホを弄っていた人物がいた。
「今日はごめんなさい。予定狂わせてしまって」
「いやいや楽しかったし。舞って本当に愛されてるんだなぁって。いい女になったよ、俺にはもったいない位」
崇さんはそう言うと笑った。
きれいな夜景とそれを見つめる崇さんの横顔。
若さと勢いを失った目尻に見える優しさと風に乗って耳元に響いてくる低音のボイス。
顔立ちは整ってはいるが美形とまでは言い難い。でも、育ちと品の良さは彼に独特な風格を与えていた。
崇さんの隣を歩くと背筋がいつも伸びる。
そんな男にプロポーズを貰えるなんて、私は学生時代には想像もしなかった。
でも、告げなきゃこの恋の結論をーーー。
崇さんとの他愛もない会話を続けながら、私の頭は忙しかった。
今、それが漸くまとまった。
「崇さん、あのこないだの返事を今させて頂けたらと思うんだけど」
終に畏まった口調で切り出した。
「あぁ、聞かせて貰おうかな」
私は息を吸い、真剣に彼の瞳と対峙した。
「トウーー」
「マネージャー、大野さん! !」
崇さんも私も思わず苦笑いさせるしかなかった。
「どうしたの?」
私はやって来た部下にため息まじりに尋ねた。
「あの、ケーキがあるみたいで、主役が居ないんじゃ…」
「分かった、直ぐに行くわ」
「すみません…」
空気を察してか、彼女は部屋へ駆け足で戻って行った。
「ごめんなさい、中断して」
「ケーキ戴いてからからにしようか?LOあるだろうしね。後俺ちょっと冷えて来た」
崇さんはそう言うと、コートの襟を正して腕組みをしながら、部屋へと戻ってた。
私は冬の風でキーンと冷えてしまったカクテルグラスを片手に後を追った。
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