本命

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お決まりの歌と共にカートに乗せられてやって来たのは、丸いホールケーキだった。 『舞ちゃん、おめでとう』 メッセージと一緒に、私の大好きだったネコのキャラクターが中央に描かれていた。 その途端、私の中で何か割れちゃいけないものが割れた気がした。 私はカートを運んで来た女性スタッフの肩を思わず掴んだ。 「すみません、真下さんはどちらに?」 驚いた女性スタッフは本館にと告げた。 私は何も考えないうちに扉に向かった。 「待って」 本能だったと思う。お互いに。 有紗が凄い剣幕で阻止しに来た。 私は何も答えられなかった。 ただ、心の中にずっとあった想いは自分でさえ簡単に止められない程、熟し切っていた。 1秒でも早く会いたい。 有紗でももう抑止力にはならない。そう思っていると、崇さんがやって来た。 抱き寄せられて、いきなりキスされた。そして、耳元で告げられた。 「もう十分だよ。楽しかった、お前の好きにしろ」 顔もまともに見ることもなかった。彼は皆に挨拶すると、部屋を出ていった。
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