本命

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「待ってください!!」 追いかける有紗を見送って、私は暫く立ち竦んでいたが、やっとみんなにこう切り出した。 「ケーキ、食べといて。今日はほんとにごめんなさい。サプライズ用意してくれてありがとう」 「マネージャー?」 私の目から溢れた涙を見て、部下達は心配そうにしていた。 だが、そんな彼らを尻目に私は部屋を出た。 ヒールで走り慣れた私でも、本館へと続く石畳は走りづらくてこけそうになった。 それでも走った。 そして本館の事務室の扉を勢いよく開けた。 「真下さんいますか?」 髪を振り乱して泣き顔の女が入ってきたことに、みんなギョッと目を丸くしていた。 「真下さんなら奥にいらっしゃいます」 スタッフの女性が苦笑いで答えた。 私はそう聞き終えるや否や、奥へと歩を進めた。 「いらっしゃい。シンデレラ気分は楽しめたかな?」 彼はデスクで仕事中のようだった。 「皮肉はいいです。あのサプライズを用意したのはうちのスタッフじゃありません」 「まぁ、うちは金さえ払ってくれれば、誰が主催しようとを気にはならないよ」 「主催者はどこにいるんですか?」 私は真下さんに詰め寄った。 「そんなにあのネイリストに惚れてたなんて。舞ちゃんならもっといい男いるでしょう? 大野さんからプロポーズ貰ってるって有紗ちゃんから聞いたけどね」 真下さんは淡々と有紗の裏切りを口にした。
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