226人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
私は真下さんの話を聞きながら、無性に悠哉さんが愛しかった。きっと、凄く頑張って考えてくれたんだ。
「今ならまだあの紳士とヨリ戻せるかもよ?ケーキにお幸せにってメッセージ入れといたのに、見なかった?」
「悠哉さんを選ぶのは愚かですか?」
私はキッと真下さんを睨みつけた。
「愚かも何もねぇ。悠哉の時間はもう止められたんだよ。離婚出来てない以上あいつとの未来なんてないよ」
真下さんの言うことは最もだった。
不倫に純愛なんてない。
それは外野から見れば、滑稽以外何物でもない。
それでも、恋する者にとっては愛より価値がある。それが恋だ。
「私は紳士的な男性と結婚するより、自分の望むものを手に入れたいんです。私にとって悠哉さんが本命なんです!!」
真下さんは驚いた様子で、眉をひそめると、口をひきつらせていた。
そして、部屋の隅にあった冷蔵庫に向かうと、中から小さな紙袋を取り出した。
「そんなに言うならはいこれ。その本命とやらに手渡しておいで。あいつと真正面から向き合う気があればの話だけどね」
「勿論あります」
私は力強く答えた。
差し出された紙袋からは、ブルーローズの香りが漂ってきた。
「ありがとうございました」
真下さんはやれやれという様子で、首を横に振った。
私は受け取った紙袋片手にエントランスへと駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!