本命

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私は真下さんの話を聞きながら、無性に悠哉さんが愛しかった。きっと、凄く頑張って考えてくれたんだ。 「今ならまだあの紳士とヨリ戻せるかもよ?ケーキにお幸せにってメッセージ入れといたのに、見なかった?」 「悠哉さんを選ぶのは愚かですか?」 私はキッと真下さんを睨みつけた。 「愚かも何もねぇ。悠哉の時間はもう止められたんだよ。離婚出来てない以上あいつとの未来なんてないよ」 真下さんの言うことは最もだった。 不倫に純愛なんてない。 それは外野から見れば、滑稽以外何物でもない。 それでも、恋する者にとっては愛より価値がある。それが恋だ。 「私は紳士的な男性と結婚するより、自分の望むものを手に入れたいんです。私にとって悠哉さんが本命なんです!!」 真下さんは驚いた様子で、眉をひそめると、口をひきつらせていた。 そして、部屋の隅にあった冷蔵庫に向かうと、中から小さな紙袋を取り出した。 「そんなに言うならはいこれ。その本命とやらに手渡しておいで。あいつと真正面から向き合う気があればの話だけどね」 「勿論あります」 私は力強く答えた。 差し出された紙袋からは、ブルーローズの香りが漂ってきた。 「ありがとうございました」 真下さんはやれやれという様子で、首を横に振った。 私は受け取った紙袋片手にエントランスへと駆け出した。
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