本命

28/29
前へ
/96ページ
次へ
人生で、こんなに身も心も満たされた日は、恐らく一度も無かった。 好きな人と愛し合える、それが一番の幸せだと実感していた。 夜もすっかり深くなっていた。二人して、眠りに落ちかけていたその時だった。私は悠哉さんの腕の中である事実を知った。 「そういえば、俺も今日誕生日だったんだよ」 「おめでとう」 私は思わず笑顔になった。 これが私なりに見つけた一番の幸せだった。 どんなに素晴らしいプロポーズを貰うより、愛した人の腕の中で眠れる幸せに浸りたかったのだ。 あの日、彼が掛けたおまじないは、今も指先に輝いていた。 Fin
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

229人が本棚に入れています
本棚に追加