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「こちら、尻尾ハムハムキャット。潜入に成功しました」
静かな夜、ユキヒョウの毛衣を纏った者が小さな声で伝えた。その体躯は細くしなやかで、人間ならば退化した筈の尻尾をゆっくりと揺らしている。
その者は、冷え切った暗い家の中を音もなく歩いた。モフモフした脚は足音を肉球で吸収し、床の軋みさえも響かせない。
「こちら、尻尾ハムハムキャット。保護対象を発見しました」
人間の目には確認出来ぬ暗闇の中、毛衣を纏いし者は動きもしない幼児を見つけた。しかし、その者が幼児に近付くことはせず、白い耳を様々な方向に動かしている。
「周囲に気配なし。今から帰還します」
その瞬間、毛衣の尻尾が伸び、倒れている幼児を包み込んだ。白い尻尾は、物理法則を無視し、幼児の鼻以外をモフッと覆った。
その後、尻尾ハムハムキャットは音もなく家を出、軽い身のこなしで夜の住宅街を駆けるのだった。
「尻尾ハムハムキャット、帰還しました!」
灯りに照らされたユキヒョウの毛衣はキラキラと輝き、幼児を包み込んでいる尻尾は歪な形のまま地面に付いた。
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