第一章

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「お疲れ様」  報告を受けた者は、簡易ベッドを尻尾の塊近くまで転がしていく。簡易ベッドには体を固定するベルトがあり、尻尾から解放された幼児はそのベルトによりベッドに固定された。 「この子は、暫く眠っていて貰う。行き場も決まっていないからね」  発言者は、簡易ベッドを転がし、別の部屋まで運んだ。そして、その部屋に鍵を掛けると、ユキヒョウの毛衣を着た者に向き直る。  この時、毛衣の尻尾はユキヒョウらしい細長いものに戻っていた。また、ご機嫌なのか、尻尾の先だけがゆらゆらと揺れている。 「ご飯にする? 毛繕いする?」 「ご飯。さくらご飯にバターで焼いたサーモン。ふかふか卵焼きに若芽たっぷりの味噌汁もあったら満足する」  尻尾ハムハムキャットは、舌なめずりをしてみせた。それに対して聞き手は頷き、桃色のエプロンを装着する。 「ご飯とお味噌汁は常備してあるから、サーモンと卵焼き……まあ、十分あれば用意出来る」  それを聞いた者は頬を紅潮させ、エプロンをした者に抱きついた。
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