第一章

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「その間に毛衣の手入れをしておくこと。あと、うがい手洗いも」  エプロン姿の者は、尻尾ハムハムキャットからするりと体を抜き調理場へ向かった。一方、尻尾ハムハムキャットは毛衣を脱ぎ、ブラシでサクサクと手入れする。  手入れの済んだ毛衣はランドセルの形に似た鞄に仕舞われ、その鞄は蓋を閉じると何処かに消えた。毛衣を脱いだ者は洗面所へ向かい、言い付け通りにうがい手洗いを済ませた。  調理場からは、バターの匂いが漂い、それへ導かれる様に空腹の者は廊下を進んだ。調理場では、サーモンや卵が美味しく焼かれ、さくらご飯や味噌汁は既に配膳が済んでいた。  この為、そのメニューを注文した者は飛び跳ねる様に着席し、味噌汁を幸せそうに飲み始める。 「うん、何時飲んでも、サクちゃんの味噌汁は最高」  そう話す者の前に焼きたて卵焼きが置かれ、それにバターで焼いたサーモンが続く。 「褒めても、箸位しか出せないね、ユキちょん」  サクは、卵焼きの皿へ箸を置き、ユキの顔を見て片目を瞑った。 「十分、十分。美味しいご飯にそれを食べる為のお箸。幸せ過ぎて、時間も摂取カロリーもどうでも良くなる」  ユキは、さくらご飯を口に運び、幸せそうに咀嚼してから卵焼きへ箸を伸ばす。その後、ユキはさくらご飯や味噌汁をお代わりし、サーモンの皮も含めて綺麗に平らげてみせた。
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