第一章

8/18
前へ
/51ページ
次へ
「あ、しまった。先に歯を磨いとくんだった」 ユキは、そう言葉を漏らすと、左手で口元を押さえた。 「私、歯を磨くのが下手で汚しちゃうから。なるべく、顔を洗う前に済ませたいんだ」  ユキは恥ずかしそうに笑い、サクはにこやかに微笑んでみせた。 「でも、お風呂上がりの牛乳って美味しいよ?」  サクは言ってから片目を瞑り、顎に手を当てて話し続けた。 「今なら、給食のお楽しみ、ミルクメイク……なんと、コーヒーだけでなく、バナナやイチゴ、メロンにミカンまでストックがある。そして、牛乳を吸うと味が付く不思議なストローも、チョコにバナナにイチゴにキウイ。手に入る味は、全て入手済み、なんだな」  サクの話を聞いたユキは目を輝かせ、喉を鳴らした。 「お風呂上がりの牛乳、幸せだよねぇ。幸せ牛乳を飲んでから歯を磨く! ちょっとの汚れなんて、直ぐに流せば気にならないっ!」  ユキはサクの手を掴むと、廊下を先導しながら調理場へ向かった。そこで、サクが様々な味のミルクメイクやストローを取り出し、ユキは頬を赤らめながら味を選び始めた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加