お年玉の使い方

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「俺も知らない。でもアラビア語ってのは間違ってない。マント」 「微妙に会っているところがおじさんっぽい。トビラ」 「だねぇ。落花生」  境内に向かう階段を一歩一歩と登り本堂が見えてくる。 「そういえば、お年玉で最初に買ったものって覚えてる? イルカ」 「覚えてないなぁ。なんだだろう? 親父から買った物かな? 貝柱」 「違うよ」  妙にはっきりと美穂が言った。 「君が最初に買った物はおじさんから買ったものじゃないよ。君が自分で買いに行ったんだよ。私は覚えてるから。ライト」 「え? いつ? 子供の頃?」 「そうだよ。ほら「と」だよ「と」」  美穂に背中を押されながら階段を登る。目の前に本堂が見えた。 「時計」 「私ははっきりと覚えてるよ。武人はお父さんにお金は大事な物を買う為の物だって教わってたんでしょ? いか」 「そうだけど。柏」  お賽銭を投げ入れながら言う。 「だから、嬉しかったよ。君が最初に買ったものはね」  美穂が頭を2回下げ柏手を2回打つ。目をつぶったまま美穂が言う。 「私」  ぱっと頭の中に昔の光景が思い出された。もらったお年玉を握りしめた自分が美穂の所にいって美穂お姉ちゃんが欲しいと言っている光景。顔が急にぼっと赤くなった。 「ほら。「し」だよ「し」」  まだしりとりは続いているらしく。階段を降りながら美穂が言う。  そこで、ようやくしりとりの意味が分かった。 「しか」  美穂がにやりと笑う。 「かみのけ」  武人は美穂のわずかに赤みを帯びた頬を見ながら言った。 「結婚しよう」 「うん」  にこやかに美穂が答えた。
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