新たなる道筋

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「取り敢えず、シャワーを浴びてこい。」 和希は少女に向けて、そう告げた。 少女は和希の言葉に無言で頷きつつ、和希が指先で指し示したバスルームへと向かう。 和希は名も知らぬ少女の後ろ姿を、それとなく見送る。 あの後、和希は少女を殺す事が出来ないまま、あの場から少女を連れ出した。 少女を連れていようとも、あの場から逃れる事はさほど難しい事ではない。 地下室でボヤ騒ぎを起こし、その間に配線を切り監視カメラなどの機能を潰せば、警備態勢は最早、ザルだ。 警備や護衛の者達はボヤ騒ぎに気を取られ、機器は無力化されているのだから、予期せぬアクシデントでもない限り、脱出が失敗することはない。 そして事実、和希は何のアクシデントもなく唯一の目撃者を連れて講堂邸から脱出した。 その後、真夜中で人に見られる可能性はかなり低かったが念のため、運び屋を使い和希達はアジトへと帰宅したのである。 (俺は何でコイツを連れてきた?) 和希の脳裏を、そんな疑問が過った。 あのまま放置しておいても、講堂を殺した犯人を聞き出した後、処分される。 和希が殺すことも、講堂の部下に殺される事も殺されるという意味では所詮、同じであろう。 だが、和希にはそれが出来なかった。 この身は、殺し屋という闇の世界に染まろうとも、復讐の為だけに生きようとも、多く者達を不幸のドン底に落とす悪党達を裁いている実状ーー。 それが和希にとって僅かなりにも、救いになっていた事は確かだ。 だが、所詮は殺し屋。 人の命を奪い糧を得る卑しき存在だ。 迷う事などある筈がない。 だが、そうと分かっていても、和希にはそれが出来なかった。 それは多分、理屈ではなく、思いからなるものだからなのだろう。 和希は自らが招いてしまった状況に、呆れつつ運び屋とほぼ同時に依頼した闇医者と、道具屋の到着を待った。 そして、最初に到着したのは道具屋。 「久しいね、陽炎? てっきり殺傷具造りの依頼と思ってたんだけど、まさか女物の服が欲しいって依頼してくるとはね..。 もしかして、そっちの趣味に目覚めたのかい? まぁ、あんたは中々、イケてるから女装をしても似合うだろうけどね?」 「下らん話をしている暇があったら、仕事をしろ屍見【かばねみ】。 言うまでも無い事だが、俺用じゃない。」
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