新たなる道筋

4/5
前へ
/18ページ
次へ
それが講堂を殺し終えた直後のタイミングで出来上がるなど、皮肉以外の何ものでもない。 しかし、状況がどうあろうとキャンセルはあり得なかった。 和希は、三角定規を手に取り軽さや硬さを確かめる。 「師匠からある条件で、気化すると聞いていたが、その条件って何なんだ?」 「ある周波数の振動を加える事よ。 その振動は貴方らが【影移り】と呼んでる時に生じると、先代の陽炎からは聞いているけど聞いてないの?」 「あぁ、師匠はお前と違って口数が少ないからな。」 「あら、失礼な物言いね。 ところで何故、文具の形状に拘るのかしら? 硬質水銀は金属探知機には、引っ掛からないのだけど?」 屍見は何事もなかったかのように、話題を変え和希へと質問を始めた。 和希は面倒臭そうな仕草をしつつ、屍見に答える。 「別に。 ただ、仕事をするなら使い慣れているものの方が良いだけだ。 修行時も比較的、使いなれたモノで鍛練してたからな?」 「あら、そうなの? てっきり思い入れでもあるのかと思っていたのだけれど、思い違いだったみたいね?」 「勝手に勘違いしていろ。」 無愛想に和希が屍見へと言った直後、少女がバスタオル姿でバスルームより現れた。 「あら、良いタイミングね?」 「ああ、そうみたいだな。」 和希が、そう言い終わるを確認し、屍見は席を立つ。 それより数秒後、屍見は少女の体の寸法を確認し十分とかからずに、衣服を仕上げた。 そして、靴や下着などは用意していたモノから揃えられる。 「これで終了ね。」 「相変わらず仕事が早いな?」 「こんなのは仕事の内に入らないわ。 それよりもーー。」 屍見は小声で和希へと告げた。 「お嬢ちゃんの胸の鼓動、本来のお嬢ちゃんのそれとは違うわね?」 「どういう意味だ?」 屍見はそれに答えずに、ただ微笑む。 その直後、また別の来客が訪れる。 「じゃあ、お代は後程ーー。」 屍見は、そう言いつつ部屋を立ち去った。 ーーーーーー 「で、どうなんだヤブ?」 「俺は闇医者だがヤブじゃない。 何度言えば分かるんだ!? せめて芝【しば】か芝虎【しばとら】って呼んでくれ!」 「おいおい、虎って見た目じゃないだろ?」 「俺の名前にケチつけるな!」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加