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通称・芝虎【しばとら】こと芝咲・虎真【しばさき・とらま】は如何にもヤブ医者っぽい雰囲気を醸し出しながら、和希へとクレームを入れる。
だが、そんなふざけたやり取りも一瞬のこと。
その後、真剣な顔に戻った芝虎は和希へと告げた。
「取り敢えず外傷や、持病らしいものは無さそうだ。
少し気になるのは胸にうっすらと残るの手術痕か?」
「手術痕?」
「あぁ、恐らく、これは心臓移植の後だろうな。
ただ、本当に心臓移植したとしたなら、心臓が何の拒絶反応もなく、馴染んでいるのは奇妙と言えば奇妙なんだがな。」
(なるほど、屍見が言っていたのは、これの事か。)
和希は一人納得する。
だが、その直後、芝虎が和希へと不意に問いかけた。
「なぁ、陽炎..。
お前、これからどうする気だ?」
「何のお節介だ芝?
確かに仇討ちは終わったが、それがお前に何の関係がある?」
「あぁ、確かにお節介かもな。
だが、お前は俺の命の恩人だ。
気にするなってのが無理だろうが!」
「気にする必要はない。
あれは仕事次いでの気紛れだ。」
和希はそう言った後、懷より黒い手帳を取り出す。
そして、手帳を無造作に小型焼却炉内へと放り込む。
「おい、いいのかよ?
それは、お前のーー。」
「ただの手帳だ。」
和希は炎の中にくべられた手帳を、見下ろす。
だが、二人は不意に手帳の異変に気付く。
「あれ、手帳、燃えてないな?」
「ああ..どうなってるんだ、これはーー?」
和希は金属製のトングで焼却炉から手帳を取り出す。
そして、手帳のページをめくる。
「これは....!」
「名前と犯罪の内容みたいだな?」
芝虎は手帳のページを見ながら、和希に問い掛けるように言った。
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