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「どうなっているーー?」
和希は思わず呟いた。
何故なら、そこには見覚えのある名前と犯罪の数々が記載されていたからである。
そして、名前が記載されていながらも、犯罪内容に記載の無い男が一人。
神納事・匠【しんのうじ・たくみ】
それは国政すら動かす力があるとの噂もある、謎多き男の名前だった。
誰もその男の顔を知る者が居ないされる、裏の世界の都市伝説のような存在。
だが、その男の名前が記載されているという事は考えるまでもなく、その男は存在しているという証明であり、そしてーー。
「これは神納事が、お前の肉親を殺した件に関与してるって事か?」
芝虎【しばとら】こと芝咲・虎真【しばさき・とらま】が和希の考えた事を、言葉にする。
「確かに、そう考えるのが自然だろうなーー。」
和希は芝虎の言葉に静かな口調て答えながら頷く。
だが、その静かな口調と表情は明らかに真逆だった。
殺気と怒りが入り雑じる、復讐者の表情。
和希の内で未だ嘗てない程の、どす黒い復讐の炎が渦巻く。
「お..おい、まさか神納事に復讐しようって考えているのか!?」
「だとしたら、何だ?」
芝虎の言葉に和希は、殺意に満ちた冷たい視線で応じる。
「待て待て、別にお前の邪魔をしようなんて思っちゃいない。
ただ、感情だけで動くのは、得策じゃないって言いたかっただけだ。」
「そんな事はお前に言われるまでもない。
講堂に償わせるべき時を、どれ程の思いで待った事か、お前には分かるまい....。
だが、どれ程待つ事になろうとも俺は、必ず神納事・匠に償わせる..。」
和希は静かな口調でありながらも、殺気に満ちた声で芝虎に告げた。
その直後である。
まるで和希の怒りに呼応したかのように、机の上に置かれた手帳のページが、独りでに開く。
「うん、何だこりゃ?
こいつは地図か??」
芝虎が、黒い手帳の開いたページを見ながら不思議そうに呟く。
だが、和希はページの中身を見た直後、不意に殺意を鎮めつつ言った。
「これは俺が昔住んでいた家の見取り図だ....。」
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