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「やはりブラックさんはいい人でしたね。あ、こんな軽々しく呼んでは失礼でしょうか」
「陛下は陛下と呼ばれる事に拒否反応を示されます。別に構わないと思いますよ」
「それでもクロードさんは陛下と呼ぶんですね」
「陛下は陛下ですから。いくら兄の友人とはいえ『お兄ちゃん』とは呼べません」
ぶふっとエディが吹出した。
「なに、お前親父にそんな事言われてんの?」
「まぁ、幼い頃は実際そう呼んでいましたし、言われもしますよ。ですがさすがに『それは無い』と言わざるを得ず…」
淡々とそう語るクロードの横でツボに嵌ったのだろうエディが変な顔になっていた。
笑っている場合でないのに、想像して笑ってしまう顔を必死で押し殺しているのが分かる。
自分も今目の前にいるこの無表情に綺麗な男に『お兄ちゃん』などと呼ばれるブラックの姿を想像すると顔がにやけてしまう。似合わなさすぎる。
「なんだか私の中のブラックさん像がどんどん迷走していくんですけど、どうすればいいですか?」
まだブラックに一度も会ったことのないナダールは困惑気味だ。
「そのままにしとけばいいんじゃねぇか?実際ブラックはよく分からない男だよ。会って確かめるのが一番だ」
「私に会う機会があるのでしょうかねぇ…」
確かに今となってはブラックはファルスの国王…半信半疑ではあるがそれはどうやら事実らしいので、これからはそうほいほいと会う機会もなくなったのかもしれない。
だが、相手はあのブラックだと思うと、いずれそのうち会う機会もあるかもしれないなと思ったりもする。
なにせ彼は神出鬼没、どこに現れるか分からない得体の知れない男だった。
得体の知れない男は、やはり一筋縄ではいかなかったというわけだ。
「話が逸れてしまいましたね、続けさせていただきます」
こういう時に冷静な進行役がいるととても助かる。
自分とエディでは途中で喧嘩になってしまう可能性もあったので、クロードの存在はとてもありがたかった。
「ところでグノーさん、あなたこれに見覚えはありますか?」
クロードに差し出されたのはひとつの小さなからくり人形。
それはとても古びた人形で、だがそれに見覚えがあったグノーは驚いた。
「これ、昔俺が作ったやつだ…」
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