運命との旅立ち

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気まずい… ナダールは食堂の机に突っ伏して呻いていた。 昨晩、感情と本能のままにグノーを抱いてしまい、目を覚ましたのは陽もずいぶん高くなってからのことだった。 寝ていたベッドに彼の姿は既になく、慌てて飛び起き台所に居た母に彼等の所在を聞けば、答えが返ってくる前に満面の笑みで「おめでとう」と言われてしまった。 「え?は?何のことですか?」 「あらやだ、誤魔化しても無駄よ?あんなに色気むんむんのフェロモン垂れ流しておいて何もなかったなんて言わせないわよ?」 あてられる事はなくてもその位分かるんだから、と母に笑われた。 「え?や、それは…」 「でも、最後までフェロモン出しっ放しで、番にはならなかったの?」 早く噛んであげた方が彼の為よ、などとさらりと言われて居た堪れなさMAXだ。 親に情事のあれやこれやが駄々漏れなんて嫌すぎる…と冒頭のように頭を抱えてナダールは呻いていた。 「それで、あなたのお相手はどっち?アジェ君も可愛いけど、グノー君も口は悪いけど綺麗な子よね」 「顔、見た事あるんですか?」 「ちらっとだけね。私もΩだし、彼、同じΩに対して優しいみたい。あなたも見たのね?」 「滅茶苦茶美人でした」 うふふ、と母は笑った。 「今夜はご馳走かしら」 「そういうのやめて下さい、たぶん彼も嫌がります」 「おめでたい事なのに」 母は自分をからかうのをやめる気はないらしい。 「でも彼メリアの子よね。孫は赤毛の子になるのかしら、少し心配ね」 ランティスではメリア人の差別が激しい。政情不安なメリアから流れてくる難民は少なからずいるのだが、その扱いは決して良くはなく、メリア人はもっぱらファルスに流れていく事が多かった。 「まだ孫の話は早いですよ。ちゃんと番になれた訳でもなし、まだ関係も始まったばかりです」 「やる事やったのに?」 「それは言わないで下さい…」 う~と呻るとまた母は笑う。 「バース性の恋愛なんて体から始まることの方が多いんだから、気にする事なんてないわ」 「そういうの避けたかったんですけどねぇ」 「でもどうして番にならなかったの?彼が嫌がった?」 そうではないと首を振ってナダールは彼のチョーカーの話をする。
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