第四話

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   若者が集まるこの街は、休日ということもあり人がごった返していた。  奇抜なファッションをした人々の群れの中で浮きながら、坂を登っていく。パンケーキの店の行列やテレビの街頭インタビューを受ける女性を横目に、俺たちは進んだ。  目的地までは、ここから歩いて十分程度だった。  真夏の太陽光が降り注ぐ中、汗だくで歩いていると不意に翔が呟いた。 「圭さん。前に言ってたアドバイス実行してみたんすけど、やっぱり断られました。これで八回目」  不満そうな顔をこちらに向ける。そんな顔をされても俺はどうしようもできない。眉根を寄せつつ答えた。 「そうか? 軽井沢なら乗ってくると思ったんだが。玲香はテニスが好きだし……。ちゃんとテニスしましょうって言ったのか?」 「言いましたよー。テニスには食いついてはいましたけど……結局断られました。もう、圭さんの言うことは当てにならないっす。……でもなんか、あと一押し感はありますんで、ちょっと近場で誘ってみます」  翔は今、玲香にアプローチしている。  俺のことについて相談を受けるうちに、玲香のことが好きになったらしい。でも翔は、玲香と俺の離婚が成立するまでは何も動かなかったと言う。俺はどちらでも構わないが、真面目な翔のことだ。その言葉はきっと本当なのだろう。  玲香は翔のひとつ歳上だった。話に聞くと、翔は元から歳上が好みらしい。アコのことを気に入っていたように見えたが、通りで(なび)かないはずだった。 「はあ、もう夏なのに俺の春はまだ先だなあ」 「あ、ここだ。着いたぞ」  大通りを曲がり、小さな路地を少し進んだ先。  カフェと併設した、小さなギャラリーがあった。  
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