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DMやギャラリーの外の案内板、そして目の前のポスターには、彼女の紹介が書いてあった。
広瀬亜子、二十七歳。
……本名だった。俺は一部偽名だったが、やはりアコは嘘は付かない。年齢も嘘ではなかった。
記入を終え、展示を回る。
ギャラリーは小さく、人が数人いるだけで立ち止まってしまうぐらいの規模だった。
冒頭に掛けられているのは、向日葵の絵だった。
二年前のあの国立公園で描いた向日葵。相変わらず、真夏の力に満ち溢れた黄色の波が、心の内まで押し寄せてくるような絵だ。
二年も経っていれば、最新の絵もあるだろうに。何故二年前の絵を選んだのだろう。タイトルを見ると『永遠』とあった。その意味は分からない。
後ろに人が支えたので、先に進む。そこにはここ一年で描いたのであろう、様々な絵が展示されていた。どこかの街並み。空。灯台と海。二年前よりもより繊細に、力強くなっている。
「……圭さん、これ」
前を行く翔が、ふと肩を叩く。
それは最後の展示だった。他の絵よりも少しサイズの大きいそれに、見入った。
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