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その絵は、唯一の人物画だった。
ベッドで、よれよれのシャツのまま眠る男。うつ伏せで顔だけをこちらに向け、片手はベッドの縁から落ちている。いい夢でも見ているのか、その顔は幸せそうだ。
それは、俺の姿だった。
ベッドの上には十一月のカレンダー。仮眠部屋の片隅を描いたものだった。
タイトルを見る。
『わたしのすきなひと』。
翔が、ニヤニヤと笑いながら俺を肘で突く。
「ほらー、やっぱりアコちゃん捕まえておけばよかったのに」
「……知らん」
俺は言いながら、思わず笑った。
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