第四話

19/22
前へ
/83ページ
次へ
   その絵は、唯一の人物画だった。  ベッドで、よれよれのシャツのまま眠る男。うつ伏せで顔だけをこちらに向け、片手はベッドの縁から落ちている。いい夢でも見ているのか、その顔は幸せそうだ。  それは、俺の姿だった。  ベッドの上には十一月のカレンダー。仮眠部屋の片隅を描いたものだった。  タイトルを見る。  『わたしのすきなひと』。  翔が、ニヤニヤと笑いながら俺を肘で突く。 「ほらー、やっぱりアコちゃん捕まえておけばよかったのに」 「……知らん」  俺は言いながら、思わず笑った。  
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加