第四話

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   ギャラリーを出ると、もうとうに昼を過ぎていた。  飯でも食おうと言う話になったが、不意に翔のスマートフォンが鳴る。電話らしく、それに出ると翔は顔をしかめた。声色にはそれを出さないが、話している内容は明らかに仕事で、俺の顔を見ながら眉根を寄せる。電話を切った途端に愚痴が始まった。 「あー……すみません。修正入りました。腹立つな。今からやらないと。……圭さん、積もる話もありますし、夜に飯行きません? えーと……十九時くらいに」 「分かった。じゃあお前の仕事場の最寄り駅に夜行くよ。都合がついたら連絡くれ。頑張れよ」  大きくため息をつく翔と別れた。休日だというのについてないことだ。俺も電車に乗ると、一旦自分家の最寄り駅で降りた。  俺は今、小さいアパートを借りてそこに一人で住んでいる。  帰ろうと思ったが、家にいても淋しいものだ。外に出ていてもその気持ちに変わりはしないが、翔との待ち合わせまではあと三時間。行き先を変え、コーヒー一杯で長々と居座れるファーストフード店に入った。二階の窓際の席に座り、ぼんやりとする。鞄からアコのDMを出した。  ……この二年、彼女はどんな暮らしをしていたのだろう。  DMや、展示のウェブサイトを見てみても特に情報は載っていなかった。でも、きっと一人で頑張っているような気がした。そう、願っていた。  
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