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気が付くと、夜が深まっていた。
正面の窓からは、淡い青と群青のグラデーションの空が見える。そこに一番星があった。今夜一番最初に見えたその星は、力強く光を放っていた。
小さい頃に聞いた、天体の授業を思い出す。
――“オリオン座の三つ星はとても近くに見えますね。でも、これらの星は実は遠く離れていて、それぞれが孤独に輝いているのです”
孤独に輝く一番星。俺はいつの日かそこに、アコの姿を重ねるようになっていた。
夜が更け、都心から少し離れたこの街ではいくつかの星が見える。それでもその一番星は孤独に、そこに輝いていた。
アコ。お前は俺にとって、自由の象徴だった。
都会の目の回るような蛍光色や、えげつない黄色に囚われない。自由に光り輝く存在。俺はそんな、アコの生き様に惚れたのだ。その体に安易に触れることもできないくらい、俺にとって眩しい存在だった。
俺もそんな風に生きたかった。憧れだった。彼女を手に入れたくて、執着した。一所に収まるような女ではないと分かっていたのに。自由であることは、同時に孤独でもあるのだと思った。
展示を見て、二年が経った今でも俺の気持ちは変わっていなかったことを再認識した。
本当に女々しい男だと思う。
俺は、アコのことが好きだった。
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