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「君はいつも何の本を読んでるんだ?」 本屋に向かう私の後を追いながら、彼が聞いた。 「人が死ぬようなやつ」 「趣味悪いね」 彼が馬鹿にするように言った。 「自覚してるもの。問題ないわ」 「ふぅん。まあ、いいけど」 興味が無いなら、最初から聞かないで欲しい。 それでも「死」という単語を聞いたとき、彼の視線が一瞬鋭くなったのを私は見逃さなかった。 きっと彼は私とは正反対な人種なのだろう。 この世には殺す人間がいれば、殺される側の人間もいる。どちらかといえば、私は後者だ。 殺すのは彼で、殺されるのは私。その関係だけで私は十分だった。そして、その関係はとても心地が良かった。
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