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「お母さん、昇太が月、水、金は遊べないってさ」
小学校から帰って来たばかりの永遠がふて腐れた表情を浮かべながら、美玲の背中へと声を張り上げた。
そろそろ永遠が、帰宅するだろうと、包丁で切り焼くだけの冷凍クッキーをオーブンから出していた美玲が振り返る。
「昇太君も?雄一郎君も、月、水、金じゃなかった?」
永遠がキッチンに漂うクッキーの匂いをクンクンと嗅ぎながら、自分専用の椅子に腰掛ける。
「うん。みんな、同じサッカークラブに入ったみたい」
白い皿にのせられたばかりの焼きたてクッキーを熱そうにつまみながらそう、つぶやいた。
「そう。確か雄一郎君のお父さんがコーチじゃなかった?」
美玲が永遠の向かい側の自分の椅子に心配気な顔で座る。
永遠の次に発する言葉が容易に予測出来たからだ。
「雄一郎と昇太、今日は一目散に家に帰ってったんだ」
三個目のクッキーを口に運びながら、寂し気につぶやいた。
「俺も、入っちゃダメ?」
学校が終わると、いつも3人で遊んでいた永遠の寂しい気持ちは十分にわかった。
「雄一郎君、昇太君にだけ声かけたの?」
「ううん。雄一郎は俺を誘いたかったみたいだけど、雄一郎のお父さんと昇太のお父さん、同じ職場みたいで、なんか……話が盛り上がったみたい」
父親同士が同じ職場だと言うのは美玲にとって初耳だった。
「昇太のお父さんにもコーチを頼んだんだって。五年生の子がたくさん入部したみたいだから、手伝ってくれる大人が欲しいとか言ってた」
「お父さんたち、みんなサッカー経験者なの?」
「経験者じゃなきゃ、コーチなんか出来ないんじゃない?」
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