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其ノ弐:伊豆の頼朝と北条氏
私達── 源九郎義経一行は、無事に平泉に到着した。
知らせを聞いて、お邸で待っていた景光さんが歓迎してくれた。そして郎党達にそれぞれ、小さいものの住処を用意してくれた。
景光さんって、この平泉ではよほどの権力者なのね、きっと。
そして私には、自分の邸に住めと言ってくれた。他に寝床がない私はそれに甘えたけど。
ただ寝泊りさせてもらうのも申し訳ないので。男装を解いて雑子女── 下働きの女中として働き始めた。
九郎は御館さんと基成のお爺ちゃんに謁見し、無事に奥州に歓迎された。
今は御館さんの一番の家来である佐藤さんの別荘にお世話になっていて、そこの御子息達── 歳の近い二人の若者と文武の稽古に励んでいる。
私もたまに佐藤さんの家に呼ばれて読み書きや刀、弓の使い方なんかを習わせてもらっている。
私達がそんな新しい環境での生活を始めてしばらく過ぎた頃。
弁慶さんに負けないくらいの、やっぱり悪僧の衣装に身を包んだ大男…… と言っても、スリムでノッポな男の人が弁慶さんを訪ねて来た。小さな可愛らしい女性を連れて。
彼の名は常陸坊海尊。弁慶さんと同じく、京都の比叡山というお寺で用心棒のようなお坊さんをしていたらしく、弁慶さんとはとても仲良し。
突然、お寺からいなくなってしまった弁慶さんを心配して探していたところ、亡き義朝の忘れ形見とともに奥州に旅立ったとの噂を聞く。
それで追いかけて来たらしいのだけど。一緒にいた可愛い女性のことを聞いて吃驚!珠蟲というその女性、なんと弁慶さんの彼女だったのだ。
九郎の静ちゃんと言い、弁慶さんの珠蟲ちゃんと言い、どーしてこんなに可愛い彼女がいるの?まったく…… 妬ましいったらありゃしない!
海尊さんは景光さんから、弁慶さんと同じような庵を用意してもらってそこを仮住まいとしている。
珠蟲ちゃんは私と同じように、この邸で雑子女として働き始めたけど。夜は弁慶さんの庵に行っているみたい。
いやはや、お盛んなこって。
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