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「ねぇ、お義兄さん。どうして天皇ともあろう御方が、戦場で平家と一緒に死ななきゃいけなかったの?」
私の質問に、姉が呆れたように溜め息を吐く。ゴメンね、馬鹿で。
「あはは…… 建礼門院は高倉天皇に嫁いだ清盛の娘。だから安徳天皇は清盛の孫に当たるんだ。
壇ノ浦の時点で清盛は亡くなっていたものの、平家一門は福原── 今の神戸に都を遷す計画をしていたからね。
一門の息が掛かった安徳帝を、いつも傍に置いておきたかったんだろう」
「ふ~ん」
やがて神主さんが現れて、姉の安産祈願が始まる。
叩かれる和太鼓の音に、私達三人は深々と頭を下げる。
あれ── なんだろう。急に眠気が襲って来た。このまま目を瞑ったら、そのまま眠りに落ちてしまいそう。
こんな厳かな儀式の最中に居眠りなんて、罰が当たるだろうけど。
あぁ── でももうダメ。そう思って頭を下げたまま、私は堪えられなくなって目を瞑る──
*
何かで顔を、何度も突かれるような感覚。何か── フワフワしたものの上に寝転がっているみたい。そして土の匂い。
突かれる顔が痛くなって、何するのよ!と言わんばかりに目を開けて上半身を起こす──
え?ここはどこ?鬱蒼とした森の中。でも温かな陽射しが樹々を通り抜けて地面まで届いている。私は落葉が腐って柔らかくなった地面に横になっていたみたいだ。
この人、誰?長い木の枝を持った初老の男性。ノースリーブのワイルドな毛皮を着ている。その手に持った枝で私の顔を突いていたのか。
「おぉ。気が付いたか。てっきり死んでいるのかと思ったぞ」
そう言って男はケラケラと笑う。
「あのぉ…… ここは……」
「大丈夫?立てるかい?」
男が腕を伸ばしてくれるので、ここは遠慮なく掴む。
「お!お前さん、女かい?」
失礼な!どこからどう見ても…… って。男に見間違えられるのも、もう慣れっこだ。
私の身長は170cm。手足や身体はヒョロ長くて、食べても食べても太りゃあしない。まぁ、身軽なのはいいことなのだけど、せめて胸にだけはお肉が付いて欲しかった!
家族や友達は「モデルになればいいのに」って言ってくれるけど、逆にどーやったらなれるのか教えて欲しい。
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