オレンジの返り血

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「それも全身まんべんなく、こんがりとな。お前の苦手なウェルダンだ。困るだろう。これだけ部下思いの料理長が居なくなるのは」 「はい。料理長には、教わりたい技術がまだたくさんありますから……」 「まあ、それもあるだろう。それになにより、これだけ人望の厚い上司は滅多に居ないだろうしなあ」 「とにかく、分かりました。俺、やれるだけやってみます」  料理長は部屋を後にした。これから厨房で待機している調理人たちに事情を伝え、市長に対する言い訳を考えなくてはならない。忙しくなりそうである。そう思い、やってやるぞとやけくそに腕を振る。   3    最終的には料理長の命に頷いたものの、ジャッカロープの照り焼きの段取りなら分かっても探偵の真似事なんてさっぱりだ。どうしたものかと途方に暮れかけ、死体をよく見てみようと決心するにはずいぶん時間がかかってしまった。  無残な光景である。思わず咽てしまいそうな不愉快な臭いもする。眼をそむけたくなるが、あれは豚の丸焼きなのだと自分に言い聞かせることでなんとか向き直る。幸運にも死体は太り気味だったので、イメージ置換は割合と容易であった。     
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