1 サタンについての抗弁

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1 サタンについての抗弁

(被告人代表者の声明) 〝熱情王〟アスモデウスは被告人の代表者として、帝国全土に対し、以下の如く声明を発表せり。彼女は地球人類向けの放送においては例の如く、髪に愛らしき飾細布(リボン)を結び、表情豊かで親しみに(あふ)れる少女の姿にて、視聴者に語りかけたり。 「帝国特別設置法廷の許可のもとに我、種族融合体アスモデウスは、第二次帝国内戦中の戦争犯罪に係る軍事裁判の法廷内において、我が被告人団を代表して行いたる陳述(ちんじゅつ)につき、銀河系及びアンドロメダ銀河の主要な報道媒体を通じ、ここに概要を公表するものなり。なおこの配信版は、自然・人文及び社会科学的な用語または記述につき、太陽系第三惑星〝地球〟向けに配慮がなされしものなり」 「検察側の公訴内容は第一に、被告人たる種族融合体サタンが、先帝の古き同盟種族でありながら、その側近たる中枢種族となり得ざりし遺恨及びその過激なる社会思想から、他の被告人と共謀・共同して、帝国に対し反乱を企てたる嫌疑なり」 「第二に、被告人たる我アスモデウスが政治的野心からこれを助け、他の被告人にも反乱への加担を教唆(きょうさ)したる嫌疑なり」 「第三に、凶悪なる軍事種族の被告人バールゼブル・グラシャラボラス・アスタロト及びアモンが、その兵力を以て帝国各所を制圧し、社会の秩序を破壊したる嫌疑なり」 「第四に、被告人ストラスがその種族的異質性及び病的なる学術的関心から、姉妹種族のアミー及びヴォラクと共に危険なる科学技術を次々と開発し、これらを使用・供与することによりて、他の被告人を幇助(ほうじょ)したる嫌疑なり」 「第五に、我が友好種族なる被告人アドラメレクが帝国を裏切り、第一次内戦における敗北以来帝国中央に敵意を抱きたる被告人ベールら銀河系外周星域の非酸素・炭素系種族を煽動して、再度の反乱を生ぜしめたる嫌疑なり」 「我等は以上の罪状に基づき、邪悪なる自称〝新帝国〟の統治をもたらせしものとして訴追(そつい)せられたり。これらの公訴事実に対する我が主張を一言で表現すれば、それは〝事実無根〟であり、その理由は以下の如し」
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