姉貴

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 姉の病気が発覚したのは、四人家族になって4年過ぎた頃だった。  腎臓の病気だった。  年老いていた姉は、それでも手術に耐え、入退院を繰り返しながら頑張って生きてくれていた。    私などは、そばで姉の治療を見ているだけで痛い気がした。医師に言われるまま、母と共に姉を押さえつけるのも、辛くて仕方なかった。  そんな状態でも姉は、やはり穏やかで優しかった。  やがて動くことがままならなくなり、それでも姉は、私たちをまっすぐに見つめ、静かに笑顔だった。  大きな姉を背負うのは、いつも父の役目だった。病院に行くとき、ちょっと遠慮するような、安心するような表情が、姉らしかった。  そんな風に、それなりに淡々と時は過ぎ、何やかんやとありながらこのまま同じように毎日を送っていく気がしていた、冬の日。  姉が息を引き取ったのは、朝だった。  直前まで普段通りで、ただ、朝ごはんを残したことを母が気にしていた。  6時半過ぎ。  父も私も、支度をしながら、居間の隅のベッドで横になっている姉へ、通りかかる度に声を掛けていた。  いつも穏やかな微笑みを向けてくれる姉の反応が少し鈍くて、それが胸をざわつかせ、辛そうな姉に私はつい過剰に声をかけていた。  そして、姉が突然痙攣したのが、7時前。  そのまま逝ってしまった。  母の腕に抱かれ、父の手で頬を包まれ、私に撫でられて、姉は一人旅立ってしまった。
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