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「ちゃんと、みんなが揃っている時間で良かった。みんなにお別れしてくれたんだね」
と、母は涙を拭わず姉を抱き締め続けていた。
そうに違いないと、私も思った。
「ラルフは、本当に幸せだったよ」
近所に住むおばあさんがやって来て、姉を丁寧に撫でながら、何度も繰り返した。
姉の顔を見るたびに無闇に気の毒がり、本当に可哀想だったとやたら口にするそのおばあさんを、母は心底嫌がっていた。
しかしこの日だけは、おばあさんの言うに任せ、ただ横で目を閉じていた。
ラルフと名付けたのは、姉のもともとのママさんだった。
名付け親が離婚後手放したのは、姉が大型犬だったからかもしれない。女性の一人暮らしに合う犬種とは言い難い。
そしてまた、男性の一人暮らしに合う犬種でもなかった。
それはもちろん察するところではあったけれど、母は、姉の死を元の飼い主に伝えはしなかった。
私も父も、それについて進言する気などさらさらなかった。
ラルフは、可愛くてしっかり者で優しい、私のお姉ちゃん。それ以外の何者でもなかった。
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