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いつも親父の部屋には、大きくて古いカメラがあった。俺は、それを弄るのが大好きだった。
時折、親父のカメラでこっそり写真を撮っては写真コンテストに投稿した。評価されたら、親父も認めてくれるんじゃないかと信じていた。
その結果、俺の写真は写真コンテストで大賞し、賞金100万円を手に入れた。まだ中学一年生の頃だった。
あの頃の俺は、なんだかんだで人生夢いっはいで、夢だらけだった。親父の言うことなんて、聞く気もなかった。
だけど、「なんでこんなくだらないコンテストに応募したんだ。
こんな下手くそな写真を勝手に応募しやがって!全国に名前が公開されてしまったじゃないか。
お前の名前が公開されるのは、この日ではない。お前が、次期代表になる頃だけだ。
もう2度とこんな勝手な事をするな!」
と、何度も両頬が腫れるまで殴られた。
痛くて。痛くて。
顔いっぱいの痣だらけの顔だったけど、それでも俺は学校に行った。
親父が「どんな事があっても、学校に行け!」と、何度も怒鳴るからだ。
召使いの吉永爺さんは、「坊ちゃま。可哀想に。」と、こっそり病院に連れて行ってくれたりした。
俺は、親父の信仰してる宗教の関係で勝手に病院に行くことさえ許されなかった。
おそらく、吉永爺さんがいなければ俺は遥か昔に死んでいたことだろう。
85歳の吉永爺さんだけが、心の支えだった。
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