この胸に溢れんばかりのありったけの想いを

第２章 親父の過去

親父のクローゼットの中を、親父がいない間にコッソリ検索するのが好きだった。

いつも、家で威張り腐った態度しか知らないままだったら、きっと親父の事嫌いになってたと思う。

クローゼットには、俺の知らない親父が沢山いたんだ。きっと、親父は昔カメラが大好きな人だったんだろう。

クローゼットの中には、大量の写真データが入ったROMが整理整頓されていた。

典型的A型の几帳面な親父。ファイルに、日付けと内容を書いたラベルを貼り、丁寧に保管されていた。

2030年の今なら、こんな保管の仕方などしなくてもずっと便利な方法がある。

しかし、20数年前のデータ保管の仕方って結構原始的なんだなーって思ったんだ。

親父の文字を見たのも、このクローゼットが初めてだ。

親父の字。丸っこくて、綺麗な字だった。
あの荒っぽい性格からは、以外だなと思った。

普段、文字を書く機会なんて早々無いからね。今の時代って。

俺は、このクローゼットに入ると過去にタイムスリップしたような気持ちになったし、普段は忌々しい親父の魂に触れる事が出来らような気がした、

今の親父からは信じられないけど、昔は和装の様な服を着て集団で写っているような写真があった。 一瞬、何かの宗教活動の一環だろうか？と思った。

しかし、どうやら道端で派手な衣装を着て踊っているような雰囲気だった。

そして、見たこともないような笑顔をしていた。本当に楽しそうな顔して映っていた。

親父が、一体何をしていたのか。

写真の衣装に記載された文字「虎龍伝」をネットで検索すると、過去に実在した踊りのチームのようだ。

しかし、今ではほぼ過疎化を辿って衰退化してしまったと書かれていた。

時代は、人が歌ったり踊ったりする時代ではなくなっていた。