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悪い霊
「お前んち、悪い霊が憑いているよ。おれが思うに、そいつは蛇の姿をしているね」
カワズと名乗った男は、神妙な面持ちで二の句を次いだ。
退屈な授業をようやく終えての帰路を妨げられた苛立ちは、彼の口から紡ぎだされた内容によって幾らも増して、結局俺は不機嫌に顔を顰めることを我慢することはできなかった。
遠慮も忘れて、相手の身体をじろじろと見まわす。低い身長にひょろりとした体格。くりくりとしたどんぐり眼が強いて挙げられる特徴といった程度の、平凡な面立ちの少年だった。校門の前で声をかけてきたあたり同じ高校生なのだろうが、それにしては幼い印象を覚えた。
「――悪いけど、意味が分からないんだけど」
「いや、だからさ。お前の家に、悪い霊が――」
「だから、意味分かんないって」
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