悪い霊

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「あんた、こんな時間に起きて間に合うの」 「無理かも」 「……伸治はさっき先に行っちゃったわよ」  用意された朝食をおざなりに片付けるころにはすでに遅刻は確定で、俺はすっかり気が抜けてしまった。一限目は教師の苦手な数学だし、むしろこのくらいで丁度良いような気すらする。だらだら準備を済ませていると、また母親から怒声が飛んだ。歳を取ると大声を出すくらいしか娯楽がないんだろうかと思うくらい、うるさい。仕方なく、俺は家の扉を手早く開ける。  伸治は今年で中学二年になった俺の弟だ。母親に似て大雑把な性格をしている。声もでかい。最近はいわゆる難しい年頃というやつであまり話をすることも無くなっていたが、学校の方向が同じということもあり一緒に家を出る習慣だけは惰性で今日まで続けられていた。だからといって別々に登校することに抵抗があるわけでもなかったが。     
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