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学校は駅とは逆の方向にあるので通勤中の大人もおらず、住宅街は静まり返っている。身を刺すような冷たい大気が俺の足を急かす。カーブミラーにはひどい寝癖の自分が写っている。陽光は薄雲に覆われて、なんだか湿っぽい朝だ。相変わらずなんの面白味もない。面白い通学路というのもそれはそれで考えものかもしれないが、この道を歩くのも、これから先に待ち受けているであろう授業も退屈なのだと思うと、自然とため息が漏れる。――早く家に帰りたい。家はすぐ近くにあるようで、何時間分も遠い。
ふと視線を前方へと戻したとき、俺はぎょっとして立ち止まった。昨晩なんの変哲もなかったアスファルトの道に、グロテスクな染みがある。
蛇が死んでいた。
旅行先でもテレビでも見たことのないような、真っ白な蛇だった。カナヘビと大差ないくらいの小ぶりなサイズではあるが、遠目に見ても朽ち縄や何かとは見間違いようもない。気持ちのいいものではなかったが、遅れすぎて遅刻が欠席になっても困る。遠回りするわけにもいかない。おそるおそる近づいていく。
どうやら蛇は胴体を何者かに踏みつけられたようだった。つぶれた身体と体液が、見るも無残な足跡を残している。小粒の宝石のような漆黒の双眸にはまだ艶があり、今にも襲い掛かってきそうな凄みがある。
「――うわッ!?」
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