第一章『戦場の少女』 

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 あらゆる面で世界を先んじる環太平洋連合国(略称PRA)は、自国のみならず植民地支配国を含めた地域の資源と、世界最先端の科学力、航空戦闘機、戦闘車輌、弾薬等の兵器。安価で栄養豊富、大量輸送の安易な戦闘糧食、戦場医療技術、医薬品の開発に余念がなかった。存分な科学力開発力労働力を背景に、戦争の終わったその時、世界の中心に居るためだ。特にPRAは、履帯もしくは無限軌道と呼ばれる、幾つかの機動輪を囲んで接続された履板を動かすことによって移動する戦闘車輌の開発に注力していた。行く行くは車輌そのものに砲塔を搭載する計画だが、今は機関銃を備えるに留まっている。それでも履帯による走破能力は開発部の予想を上回るものがあり、砲兵を輸送する車輌としてだけでも、文字通り大車輪の活躍を見せていた。その成功を受けPRAが各部隊に配備した履帯戦闘車輌、通称戦車は万を下らないと云われている。  一方の日出帝國だが、予てより国家予算の十分の一をも割き研究開発していた一大計画が始動する。  ※  南半球の激戦地。  PRA同盟国である赤い砂の大陸の北岸。  日出帝國の歩兵大隊が駆逐されていく。今まで陸戦に重きを置くことがなかった帝國軍部は、ここまで戦力差があるとは思わなかったと後にのたまったそうだ。  当然ながら世界を巻き込む大戦に参戦した以上、当然敗戦するわけにはいかない。日出は先進気鋭の国家であると世界大戦の参戦を以て示した帝國が、植民地化の憂き目に遭っってしまっては本末転倒の極みと云えよう。  それでも、我が帝國には大御神の庇護があると口に出す者も多い。奇跡を幻視し、明日への糧としてるのかもしれない。  伸びきった兵站に満足な物資輸送の良策はなく、最前線で戦う者たちに食料は勿論、医薬品などの供給は皆無に等しく、怪我をしても傷口を塞ぐ包帯すらない有様。銃に込める弾薬もない。敵国は鉄の装甲の最新鋭無限軌道車輌で突っ込んでくるのだから敵うはずもない。兵士たちは雨のような銃撃に曝され、次々に落命していった。     
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