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この砂の国には石油が出るという。そして石油以外にも地下資源が豊富であると聞く。資源に乏しい帝國としては、遮二無二占領を急いでも致し方のないことだった。そうしなければ資源欠乏は遠からず帝國の国力を削ぎ、有利な条件での講和すら至難の業となる。
またこの大陸は、一年を通して温暖な気候であるため、占領後の大規模農場設営の青写真まで描いていた。
確かに日出帝國軍部には夢想家が多いのかもしれない。
夢が現実を食うのか、願うから奇跡は起こるのか。
敵陣からの砲撃に肉片が舞い落ちる。
機関銃の掃射に曝され、それでも突き進む兵士たちだが、土塁の陰から飛来する手投げ弾の爆発に、骨肉が四散する。無惨だ。そもそも敵地に寡兵で乗り込んで、基地を奪取するなど無理にもほどがある。そもそもが敵前線基地占領ありきの計画立案が主だと聞くから、よほど軍部は先を急いでいるようだ。一兵士の目にも物資の欠乏は明らかであり、こと最前線ともなれば食うものなく、まさに泥水を啜って命を繋いでいるにも関わらず。
足らぬなら奪え。
窮まった戦闘にこの理屈は大いにわかる。人間追い詰められれば思わぬ力を出すこともある。しかしそれも最低限の装備あってのことだ。
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