第一章『戦場の少女』 

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 相手が最新鋭の機関銃や爆弾を使用しているのに、上陸部隊に配備されたものはと云えば、旧式の単発小銃と、半数が不発に終わる手投げ弾、後はほぼ鈍らの刀ばかり。これでは端から死に戦である。それでも命令に粛々と従うのは兵士の性か、護国の気概か。  戦況はまるで芳しくなく、歩兵隊はその数を三分の一にまで減らしていた。  ただ、この無茶な上陸には、佐官以上の所謂将校級以上でしか知り得ない作戦が秘されていた。  陸軍の最新兵器の投入。  歩兵隊進攻後の深夜、最新兵器の為のみに製造した揚陸艦によって最新兵器を上陸させ、運用を開始する。  前線にばら撒いた歩兵はつまり餌である。無謀な進軍を陽動に、小国ならば購えてしまえるほどの予算を費やした帝國軍部虎の子の最新兵器を、ついに実戦配備する。  手があり、足があり、頭のある、人型の兵器をだ。  人型の兵器。  航続距離の長い戦闘機。長距離砲を装備した軍艦。殺傷力や装弾数、連射能力の高い銃でもなく。  軍部が血眼になって作り上げたのは、人型の兵器であった。  油圧式の膝部が独特の唸りを上げ稼動し、巨体を前へ前へ進めていく。日の昇る頃に最前線に到着する目算だ。  机上のみでだが模擬戦は当然何度も行っている。しかし如何せん新型の兵器。況してや人型、蓋を開けてみるまでわからないと云うのが本当のところ。 「人は大きなものに畏怖を示す、いわんやそれが巨きな人であるならばその効果は絶大、戦場では怖気づいたほうが負けるのだ」     
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