第一章『戦場の少女』 

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 尖った頭部は槍のよう、弓手馬手にこれも巨大な銃器火器を携えたその姿に、少年兵はなぜか幼い頃地元の菩提寺で見た不動明王の仏画を思い出す。  先頭を行くのは烈火のごとく赤い機体。胸部に墨痕荒々しく『ほむら』と記されている。全高は十二米。丁度電信柱ほどの高さだ。ほむらに続くは銀灰色の機体。その胸には『はがね』と記されている。  はがねがほむらより前に出る。はがねは十五米強もある特殊鋼の大盾を備えた守りの機体だ。  とにかく人型であることに軍部は拘った。前述した敵に畏怖感を与える為も一義。  そして更に曰く。  世界に先立つ兵器だからこそ、美しくなければならない。  敵兵の動揺など計りようはないが、激しかった砲撃が確かに一瞬やんだ。  陽光を受けて立つ二体の巨人機は異様であった。  刹那の静寂に、帝國そして連合国の兵士らの息遣いが聞こえる。  しじまを打ち破ったのは連合国の手投げ弾だった。それを契機に、再び戦場は熱を帯びる。  再開された砲撃は、明らかに二機の人型兵器に照準を変えていた。  撤退のラッパは鳴り続けていた。戦場を新兵器に委ねよと告げている。     
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