第一章『戦場の少女』 

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 ほむらに比べて下半身に分厚い装甲の為されたはがねが、希少なタングステンにさらに希少なベリリウムを合わせた合金製の大盾で砲弾を防ぐ。敵の砲撃の合間を縫うように、ほむらが突出し大砲のような巨大銃を撃ち、華麗に反転するとまたはがねの陰に身を潜ませる。その一連の動きを繰り返し二体の巨人は、じわじわと敵陣へと切り込んでいく。  完成された動きだと誰もが思った。よほど訓練を繰り返した証拠か、それとも相当の手練れが乗っているのか。そもそも人が動かしているのかと疑う者もいた。あれはもう、あのままの生き物ではないのかと、目の前の信じがたき光景に圧倒され考えるのを放棄しているに近い。  戦況が変わっていくのが肌で感じられた。  帝國兵の絶叫はやみ、戸惑いの声からやがて熱狂に変じていく。  そして、ほむらもはがねも露払いに過ぎない。  真打はその後ろに控えている。  まるで呆けていた少年兵の真後ろに、静かに、厳かに立つ三機目の人型兵器。  神仏の像のごとく輝く金色の機体に異国の朝陽が乱反射し、直視できない。直視できないゆえ神々しい。  胸部に『にちりん』の文字。  ほむらが柔の機体であるならば、はがねは正反対の剛の機体。それはそのまま各機の動きに現れている。はがねが守り、ほむらが攻める、打撃と防御を繰り返し進んでいく。そうして作り上げられた道に、にちりんが降り立つ。  にちりんは派手な外装とは裏腹に、特段目立つ装備はない。他機に比べ手足が若干長く造られ、丹頂鶴を想起させる。     
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