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第三章『機械』
風に乗って読経が聞こえる。
戦没者名簿の中に、火焔、鉄鋼の搭乗員の名はない。
ひるねは普段から鬘を被り、歯を入れるようになった。
日出帝國はバロン諸島での戦闘に辛くも勝利した。
戦死者は二万人。
帝國陸軍は損傷の激しい火焔を深海に破棄、鉄鋼のみ回収した。
眠は空に昇る煙を見ていた。
合同慰霊祭には軍の上層部の連中もかなり顔を見せていた。まだ赤い砂漠の大陸を欲しているのだろうか。確かに地下資源の豊富なあの大陸を手にすることができたなら、日出の国力は上がり、世界の趨勢にも大いに影響しよう。
眠としては特戦機に乗る少女たちへの負担がどれほどになるのか、そればかりが気になった。
背は高いが猫背気味の眠の横に、背は低いが姿勢がいい新兵器開発の責任者が並んだ。神経質そうな男、姥負博士である。
「話がある」
眠はなんでしょうと物憂げに返事をした。
「思考部品の品番廿」
ひるねのことだ。
「我が軍最新鋭の兵器でありながら、少々安定性に欠ける」
「当然です。彼女たちは部品じゃない、人間だ」
「肉体的な不安定性ならば軽減することができる」
そう云って姥負は眠の正面に回った。慰霊祭に白衣という姿。
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