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第五章『感情』
「月光!」
眠は全身を使ってハンドルを切り、眼前に飛来した特戦機を避けた。車体は大きく傾ぎ、荷台の槐が転げ落ちそうになる。
月光は一度大きく排気すると、腰に佩いた太刀を抜き放った。
抜き身が陽光を撥ね返す。
日輪には常時携行している武器はない。胸部に強烈な一撃を有しているが、格闘戦に適ったものを与えられていない。重粒子光線のみが日輪のすべてなのだ。
ひるねはそもそも月光相手に戦うだろうか。
日輪はまんじりともせず、月光の動きを注視している。
次々に兵士棟から陸戦部隊の手練れたちが集結する。ただ、遠巻きにせざるを得ない。下手に追い詰めて重粒子光線を放たれては大損害は免れない。
姥負が到着した。
姥負は月光を見、日輪を見て、頭を抱えた。
人の心というものを軽んじていた結果が今、目の前に展開している。しかし姥負博士は嘆く。
「生体部品の軽量化をもっと迅速に進めていさえすれば、このようなことにはならなかった!」
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