大人になっちまった俺たちは

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 パチリ。電気のスイッチは、どうしてこういい音なんだろう、そんなことを子どもの頃から思っていた。てきとうに座っててなどと言う必要もなく、もう我が友はテーブルのとなりであぐらをかいていた。それどころか勝手にテレビの電源まで入れて、ガサゴソとビニール袋の中身をテーブルにひろげていく。  大人になっちまって、汗っかきの甘ったるいオレンジジュースも今は缶入りのアルコール。やたらにポロポロこぼれていたスナック菓子は、最近じゃもっぱら枝豆とイカの燻製。いつからか、そうなっていた。いつからか。いつ頃からであったろうか。 「あ、やっこあるわ」 「食う」 「おれ、ちょっと洗面の電球替えてくる」 「洗面のって、ここ越したときにもらったってやつ?」 余計なことを覚えているやつだと思った。 「ああ、そうそう。昨日、それくれた人の結婚式だったんだよ」 おれも何を余計なことを言っているのか。誰かに聞いてほしかったのかもしれないし、自分に言い聞かせているのかもしれなかった。  引っ越しのお祝いに。そう言って、彼女がくれた薄いピンク色したデスクライト。あんまり俺に似合わないから洗面に置いてみたところ、サイズはピッタリ似合っていたので、ありがたく使っている。その頃、正体不明の焦燥を持て余していたおれは、なけなしの貯金で高いブーツを買ったばかりで、とても新しいインテリアを買う余裕などはなかった。ベッドもテーブルもタオルもコップも何もかもライトと調和はとれなかったが、桜色の心遣いは、いつも思い出から笑いかけていた。     
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