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なんとなくテレビを見ていた友が、急にそんなことを言った。型落ちの液晶画面には、憔悴しきった様子の女の横顔が映し出されていた。あぁ、これは切ない。
大人になっちまって、あの頃のアイドルはスキャンダル。クラスの女子の半分は振り付けを完璧に真似ていて、男子の幾人かは部屋にポスターを貼っていた、人気絶頂の時代を知っているだけに、おれたちには衝撃のニュースだった。時の流れは残酷だ。世界で一番輝いていると思っていた女の子が、顔面だけならおれだって負けてなかったスポーツ選手と結婚して、そこまでは祝福できたのに、数年後には不倫だなんて信じられない。だけれど、本当に心から悲しんだり軽蔑したりもしない。おれたちは、もう、アイドルがふつうの人間で、恋もするしウンコもするのだと知っているのだから。ところで、大人になっちまって、最近のアイドルはちょっと区別がつかなくなってしまった。
「お前、それはおっさんの証」
「そういうけど、わかるの、お前は」
リモコンを拾っててきとうにボタンを押すと、ちょうど今どき流行りのアイドルグループがパフォーマンスの真っ最中であったので、無言で酒を煽りながらとなりに視線を投げた。友は数秒黙って画面を見つめていたが、真剣な顔で口を開く。
「右端の子がれーちゃん。センターがかなな。そのとなりがなっつん」
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