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卓はスクランブルエッグとベーコンをぺろりと平らげると皿を洗い場に持って行った。
「お婆ちゃん。早く行こう!」
お婆さんはゆっくりと立って玄関の近くに置いある籠を取って
「はいはい。行きましょうね。今日は何が採れるのかねぇ」
こんなに歳なのになんで婆ちゃんの背中はこんなに細いのにこんなにしっかりしていて頼もしいのだろう?
「お婆ちゃん、待って」
いつか、俺もお婆ちゃんみたいな存在になれるのかな。
卓は、胸が重くなるのを感じた。
卓とお婆さん(お爺さんもいるが)の家は森の奥にあり、人と遭遇することは滅多に無かった。
お婆さんはとことこと森の獣道を歩いて行く。
森は鬱蒼と茂っており、太陽の光が暗い森の中を所々葉と葉の間から差し込んで照らして幻想的な風景を作り出していた。
時々、ヒュー、ピピピという小鳥の鳴き声が静寂な森の中を響き渡らした。
卓は、お婆さんとはぐれないようにぴったりとくっついて歩いた。
お婆さんは、ゆっくり時々止まっては草や花や実を噤んで箱の中に入れていく。
「今日は、森が元気ねぇ」
卓はキョロキョロと周りを見渡してみる。
すると、木々の枝の上に白色の人型をした生き物が並んでいたり、妖精と言うのが正しいのだろうか?背中に羽を生やした小人が笑いながら飛んでいたり、木から白いシャボン玉のような玉が出て来て空中を飛んでいたりしているのが見えた。
まただ。
卓は一瞬、体が冷たくなるのを感じた。
こいつらのせいで僕は・・・
卓は憎々しそうにそいつらを睨み付ける。
そいつらは、睨み付けてくる卓に驚いて蜘蛛の子を散らすように逃げていって木々の葉の裏や根、穴の中に隠れてしまった。
お婆ちゃんはあららと少し驚いたように言って邪悪な雰囲気を出している卓の頭を優しく撫でる。
「こらこら、卓、木霊をそんなに怖がらしたらあかんよ」
卓は心配そうな顔をして
「お婆ちゃん、あいつらのこと見えるの?」
「ああ、勿論見えるとも。あれはな、妖精と言ってこの森を守ってくれておるんじゃよ」
「あいつら妖精っていうんだ。あいつらのせいで僕は・・僕は・・・」
卓の黒い瞳から透明な雫がこぼれ落ちていく。
お婆さんはよしよしと卓の頭を優しく撫でる。
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