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1.再会
ピピピピピ……
六時。
いつもと同じ時間、いつもと同じスマホのアラーム音で目を覚ます。
シャワーを浴びて、コーヒーを飲みながらスマホでニュースをチェックする。
『朝ご飯は大事だよ!』
先輩の部屋に泊まった朝、コーヒーしか口にしない俺にそう言って、先輩はパンを焼いたり、ご飯とみそ汁を用意してくれた。
時々、それを思い出して、冷凍庫の食パンをトースターに放り込む。
金曜日。
いつもと同じ時間に出社した俺は、給湯室にいた。
この日、いつもと違うことがあった。
いつも飲んでいる缶コーヒーが売り切れていた。自動販売機に並ぶ缶をしばらく眺め、本当に気まぐれにミルクコーヒーのボタンを押した。
先輩がよく飲んでいたもの。
ブラックコーヒーしか飲まない俺は、先輩の缶に口をつけて「あっま!」と言った。彼女は、俺の缶に口をつけて「にっが!」と言う。
そして、二人で笑った。
俺は甘いものが苦手だったけど、キスした時の先輩の甘い香りと味は好きだった。
もっと、もっと欲しくなる。
飲んだら、先輩のキスを思い出せるだろうかなんて思ったりしたが、実際は、ただただ甘いだけだった。
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