1.再会

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「ずっと特定の女作らなかったお前が惚れた女とか、気になるだろ」と、名達が声を抑えて言った。 「教えろよ」  自分の話をするのは好きじゃない。けれど、先輩に再会できて舞い上がっていたせいか、話してもいいかなと思った。 「大学時代の元カノなんだよ。就職で仕方なく別れたけど」 「元カノ?」 「ずっと好きだったのか?」 「そ」 「でも、お前――」  店員が蕎麦を運んできた。名達は肉蕎麦、影井はざる蕎麦と豚丼のセット、俺は天ぷら蕎麦。 「お前、散々女と遊んでただろ」  店員がテーブルを離れると、名達が言った。影井はまず丼を手に持った。 「俺から誘ったことはねーよ」 「いや、それにしたって……」 「彼女、知ってんの?」と、影井が口をもごもごさせながら聞く。 「……知ってた……」と言って、俺は蕎麦を啜る。 「知っててよりを戻すのか?」 「そういうんじゃない…………。まだ……」 「まだ?」と、二人がまたハモった。 「返事待ち」 「お前が?」と、三度、二人がハモる。 「蕎麦、のびるぞ」  言わなきゃよかった……。  これまでの自分の行いの悪さを二人に指摘されて、一気に気持ちが沈んだ。
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